Festival Report フェスティバル レポート 2023

よそ見厳禁!アドリブと笑顔にあふれる一輪車マジック!? / キム・ジェイン

 軽快な音楽と同時に一輪車片手に出てきたのは出てきたのは高身長ピエロ、キム・ジェイン。一輪車とマジックの融合という、斬新なパフォーマンスは見るものを虜にする。

 キム・ジェイン、キム・スンジュンの二人のアーティストによるコラボだ。

 次々に展開されてゆく、ジェインとスンジュンのコミカル調で息の合ったパフォーマンスは、まるで長年の相棒のパフォーマンスを見ているようだった。しかし驚くごとに、キム・スンジュンとのコラボは今回が初だという。

 事前リハーサルをすることはなく、アイコンタクトや声、ジェスチャーだけで意思疎通を交わし、半分はアドリブだったと語っていた。

 ジェインのパフォーマンスでは、観客をステージ上に招きながら一輪車を使ったパフォーマンスを展開してゆく。ステージに上った子供たちの顔には満面の笑みが浮かんでいた。



 今日の会場は、子供が多かったから、子供を招いてのパフォーマンスをにしようと思ったと語るジェインは真のアーティストだ。
言語が違うからこそ生まれる子供たちの自然なリアクション。

 そしてそのリアクションに沸き立つ会場。観客参加型のパフォーマンスが生む一体感。その場の空気感とアドリブで展開されていくパフォーマンスは、会場の緊張感でさえも楽しんでいるように見えた。

 最後には、身長ほどに高さのある一輪車を抱えてやってきたスンジュン、驚くジェイン。一度では乗れず、二度三度と繰り返しやっとの事での成功した。何度かの失敗を経てのやっとの成功は見るものを沸かせていた。

 芸の一環として失敗しているのか、本当に失敗しているのかはわからない。失敗すら笑いに変え、初めてむしろ失敗していたほうが面白い!と思されたパフォーマンスだった。



 今回初となった大道芸ワールドカップin静岡でのパフォーマンス。彼の面白く優しい人柄が、笑顔にあふれる温かい会場の雰囲気を作っているように思えた。また来年もこの場所で見れることを願っている。

(記事/護民官、写真/つばさ) 


2023フェスティバルレポート / アーティスト フェスティバル交流アーティスト
2023/11/05 04:09 PM

意思を持ち始めたディアボロと築く愛の形 / ジュンディア

 韓国から来たジュンはこれまでに多くの国で公演してきた。そこで出会った多くの友人達からインスピレーションを受けて、彼は今の表現へとたどり着く。



 ジュンがたたずむステージには、一本の木が生え、その周りには多くの糸が張り巡らされている。複雑に絡み合うそれは、人との繋がりを表しているという。彼の胸からは印象的な赤い糸が一本たれているが、この糸が断ち切られるところから静寂の中始まる。

 糸を通して紡ぐ物語。

 ジュンの作品は愛をテーマにしているというが、愛の形は見ている人それぞれによって違い、それはディアボロへの注いできた彼の情熱であっても同じだろう。



 ジュンの操るディアボロは鋭く、かつ優雅に舞い彼の基礎にある高いスキルを感じさせるが、もっと興味深いのは彼のディアボロが次第に意思を持ち始めているように見えてくる事だ。

 意思の芽生えたディアボロは、ジュンに操られるのではなくなり、彼と共に遊び、時には縛り付け、ジュンとスキンシップをとり、親密な関係を築き上げていき、そこには彼がテーマとする愛がハッキリと見える。

 しかし、愛情を向ける相手が自分の元を去るとき、彼は何を思い、何を願うのだろう。ジュンディアの描く愛のストーリーのラストは儚くも美しい。



(記事/つばさ&写真/ほそや)

2023フェスティバルレポート / アーティスト フェスティバル交流アーティスト
2023/11/03 06:48 PM

絢爛たる韓国文化 / ハートクイーン

 大道芸にロマンス?

 そう思われた方、いえいえそれだけではないんです。見る前と後ではイメージが、がらっと変わりますよ。

 韓国の男女のカップルによる朝鮮時代の事実の物語(春香伝)を元に、ラブストーリー、舞踊、そしてマジックが繰り広げられ、さながら自分がそこにいるような絢爛たるパフォーマンスです。

 地方役人の息子を演じるチャンミンさんと、奴生の娘を演じるミソジアさんが出会い、恋に落ちて再会するまでの二人のやり取り。チャンミンさんが渡したハンカチがミソジアさんで輪になり、最後に大きな花輪になる所や王様の従者になるために猛勉強をする息子が愛しい娘を思うがために勉強が手につかないなど、みなさんにも心当たりはありませんか?

 彼女を思い、丸めた紙の中にコップの水を入れたのに開いたらない。水はどこ?花びらを入れた水が赤くなったのに、手を入れたら無色。なんでだろう。様々の疑問を抱きながら最後に二人は再会、息子はめでたく試験に受かり二人はハッピーエンドで終わりました。

 ラブロマンスは、全世界男女の憧れですよね。

 なぜラブストーリーとマジックを取り入れたのか?と質問すると、「愛は魔法(手品)と同じだから」との回答。さらには、韓国文化への理解を深めてほしいとのことでした。

 チャンミンさんとミソジアさんが身に着けていた衣装は、髪飾りから靴、すべてが韓国の文化の象徴です。
近くでお二人を見る機会があれば、ぜひ韓国の文化を堪能してみてください。

 なお、今回は二つのパターンの演出を用意してくださったとのこと。もうひとつは会場参加型で、なんと女性ではなく男性が対象とのことです。大会中で機会があれば参加してみてはどうでしょうか。

(たか)

2023フェスティバルレポート / アーティスト フェスティバル交流アーティスト
2023/11/03 05:16 PM

コミカルそしてリズミカルなアトリック・ワールド / キム・スンジュン

 韓国からやって来た若手アーティスト、キム・スンジュン(Kim Seungjun)。

 マジックとジャグリングを中心に、音楽・ダンス・パントマイムなど多彩な芸を散りばめたコミカル且つリズミカルなパフォーマンスを披露。まさにアートとトリックを組み合わせたイリュージョン、「アトリック」の世界に観客を引き込んだ。

 小学5年生の時にコイン・マジックを始め、そこから数々のマジックを習得。レパートリー数を聞いたら「天井知らず」と即座に回答。今日のステージでも花・風船・ボール・家具などの小物を操り、数々のマジックを私たちに見せてくれた。

 一人数役を担うアトリックの世界では、アーティストがその時々の役柄を明確にすることが重要。キム・スンジュンは、ステージ上を、マジックの時は黒いシルクハットを、サーカス関連のパフォーマンスでは赤い山高帽を被り、そのアイデンティティを器用に差別化する。

 自慢の芸はフラフープ。韓国で数多くのマジシャンを育てた安田悠二さんに師事し、フラフープ芸を教えてもらった。今後は韓国の音楽や雰囲気を取り入れ、フラフープ芸に更なる磨きを掛けて行きたいと意気込む。

 日本が大好き。でも、これまで日本に来る機会がなく、今回の大道芸ワールドカップをとても楽しみにしていた。今日もたくさんの観客のみなさんに囲まれパフォーマンスができ、大きな手応えを感じたとのこと。

 ちなみに一輪車マジックのキム・ジェインは、韓国で活動するビョルビョルサーカスでのチームメート。今日もお互いのステージに出演し合い、技のアウフヘーベンを図る。

 大道芸ワールドカップが終わったら、日本の街の路地・小径を歩き、日本ならではの景色を楽しみたいとのこと。もしかしたら、静岡のどこかで小さな子どもたちにマジックを披露し、彼らから大きな笑顔を引き出すキム・スンジュンの姿が見られるかも知れない。





(福)

2023フェスティバルレポート / アーティスト フェスティバル交流アーティスト
2023/11/03 04:41 PM

まるで魔法!?大迫力な火の精霊の世界へようこそ / 火の精霊

 カラッとした青空が広がる秋晴れのもと、始まった大道芸ワールドカップ2日目。三連休初日の青葉ポイント最初のステージは、韓国から来日した火の精霊が彩った。2019年大道芸ワールドカップに参加してから実に4年ぶりの登場だ。

 真っ黒な衣装を身にまとい、軽快な音楽とともに登場した火の精霊。今か今かとステージを待ち望んだ何百人もの観客が盛大な拍手で出迎える。目の前で繰り広げられるマジックと炎のパフォーマンスはまさに圧巻!

 実は炎ではないのでは?と思わせるほど、涼しい顔で観客に笑顔を振りまきながらエキサイティングでスリリングなステージを見せてくれる火の精霊だが、最前列まで届くほどの熱気が本物の炎であることを証明している。



 もともとマジシャンである彼がここまで自在に炎を操ることができるようになるまでに、約一年の月日を要したとのこと。

 炎の熱気と全身を使った全力のパフォーマンスは体力を奪うため、実は静岡にきて2日で2キロも瘦せてしまったという。それでも観客の笑顔や驚く表情、楽しかったという声が何よりもうれしいからこそ、いつでも最高のステージができるよう全力を尽くしている、と笑顔で語る。

 「2019年のステージに感動して今年も見に来たというファンの声がとても嬉しかった」と語る彼の柔らかい笑顔がとても印象的だった。「残り2日間も観客みんなに楽しんでもらえることを楽しみに最高のステージを作りたい」と意気込みも語ってくれた。

 一瞬も目を離すことのできない、エキサイティングでスリリングなステージ。自由自在に炎を操る、力強く、妖しく、美しいその姿はその名の通り、まさに「火の精霊」。彼の感動的なパフォーマンスの数々を、ぜひともその目に焼き付けてほしい。



(文:まり/写真:フミさん)

2023フェスティバルレポート / アーティスト フェスティバル交流アーティスト
2023/11/03 04:35 PM