Festival Report フェスティバル レポート 2025

空気さえ息を飲む、奇跡の軌道のジャグリング/ハタダ

それまで帽子をくるくると遊ばせていた彼は、椅子に腰を下ろし、スプーンとカップ、ソーサーを手に取る。

ゆっくりとそれらを観客に見せると、その優雅な手つきに観客は釘付けになった。

瞬きをしたその瞬間、ソーサーが宙を舞ったかと思うと、カップの中を高速で回転する。

スプーンの「カラン」という音が響いた時には、すでにすべてが元の形に戻っていた。

その後も彼は、杖と帽子を額に乗せてバランスをとったり、3つの帽子を足から頭へと華麗に移動させたりと、軽妙な余興で観客を迎え入れる。

やがて彼は観客に歩み寄り、「まもなくはじまります」と書かれたボードをひっくり返した。

「SHOW TIME!」の文字が見えた瞬間、パフォーマー・ハタダのショーが始まる。

リズミカルな音楽に合わせ、葉巻の上にワイングラスや杖を乗せたり、杖を軽やかに回したり。

技を決まると吹き出す葉巻の煙が、彼の小粋さをいっそう引き立てる。

次々と本数を増やしてデビルスティックを操り、さらに高度な葉巻のジャグリングを披露。

最後には、「それも額に乗せるの!?」と息を飲む圧巻のパフォーマンスだった。

ハタダは社会人として働きながらパフォーマーとしての活動を続けている。

どんなに疲れていても、毎日外に出て道具を手に取り練習を欠かさない。

身の回りのあらゆる道具を意識して見つめ、心からジャグリングを楽しんでいる。

「静岡の人たちに、もっとパフォーミング・アーツの文化に触れて、その楽しさを味わってほしい。」

そう語るハタダの唯一無二のジャグリングをぜひ見てもらいたい。


(とす)

2025フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2025/10/31 16:31