Festival Report フェスティバル レポート 2019

旅の途中/ロレンツォ マストロピエトロ

スーツ姿のイタリア人。手にはトランクを引き、その姿はあたかも出張にでるビジネスマンのよう。しかし、彼はビジネスマンではなく、アーティスト。大道芸人だ。おしゃれなスーツ姿から想像する彼の芸はパントマイムだろうか、コメディーだろうか。残念ながら、いずれも正しくない。 彼はジャグラー。それもその粋な帽子を使ってジャグリングをするハットジャグラーだ。 「ジャグリングと言えば、ボールやクラブを思い浮かべる人が多いよね。でも、そういった特別な道具じゃなくて、身近な道具を使ってジャグリングをしたかったんだ。」 というロレンツォ。実は彼はハットジャグリングと言えばロレンツォというほどのハットジャグラー。帽子は風を受けやすいため他の道具以上に繊細で難しいそうだ。そんな帽子を5つ使ってジャグリングをするロレンツォは正にハットジャグラーの名手と呼ぶのに相応しい。 ところで、彼の魅力はその技術だけではない。彼のコミカルな人柄だ。彼の演技を見るときは音楽が無いことにも注目してほしい。普通のジャグラーは音楽をかけながら演技をすることが普通だが、ロレンツォはお客さんやその場の雰囲気に合わせるため音楽をかけない。それでも見入ってしまうのは彼の人柄の力だろう。だから、たとえ仮に失敗をしても応援したくなる。失敗について彼が話していたことが印象的だ。 「ジャグリングをやっていれば失敗することもあるよ。でも、そんな時に大事なのは深刻になりすぎないこと。失敗とは言うなれば旅の途中なんだ。その経験は次に生きるし続けていればきっと成功する。」 旅を続け、変化し続ける彼の演技をぜひみてほしい。 (Y.K.Kobayashi)

2019フェスティバルレポート / アーティスト ワールドカップ部門
2019/11/03 03:14 PM
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