Festival Report フェスティバル レポート 2024
実施すること自体が奇跡の、貴重な舞台がそこに / 大車輪専門転
人が収まる大きさの2つの車輪に乗って、二人が観覧車のように回す、空中大車輪。本大会では唯一の演技であり、これを一目見ようと大勢の観客が駿府城に集結した。
この大規模な演技は、天候・風・湿度などにも大きく影響される。特に2日目の公演は雨天のため中止、器材が濡れたため3日目の公演もメンテナンスによる中止となってしまった。取材した最終日の今日、青い空の下で命綱もなしに繰り広げる、決死の演技を見せてくれたのだ。
パフォーマンスを見せてくれるのは、快斗とよしよしの二人組。快斗が車輪に乗ると、よしよしが全身全霊で車輪を押す。体重移動を駆使して車輪は左右に振り子のような動きをみせ、ついに車輪が頂上に達したとき、よしよしも車輪に乗ることができた。二人は車輪の中で息を合わせて歩き、二つの車輪を回していく。
快斗が派手なパフォーマンスを披露し、よしよしがそれを支えていき、お互いが非常に重要な役割を果たす。快斗は車輪の中でジャンプをするほか、なんと車輪の円の枠の外から体を出し車輪の枠にぶら下がる。さらには目隠しをして車輪の上に乗るという、少しでも滑ると落ちてしまう危険な技をやってのけた。一方で、よしよしも、快斗の様子を見ながら歩き方を微調整し、快斗のために車輪の動きを繊細に整えていた。
この二人組が結成されたのは、二人が対等な関係だったからこそである。もし先輩後輩の関係であれば、今日を迎えることはなかっただろうと語る。彼らは、年齢も同じで、大道芸人としての芸歴も同じで、お互いに意見を包み隠さず言い合える関係だという。
このパフォーマンスは、お互いのスピードや歩幅を合わせなければならず、演技中も何度も声を掛け合うとのことだ。お互いに意見をぶつけ合うことで、二人は進化を続けることができ、危険の伴うこの舞台でも完璧な演技ができていたのである。
ここまでダイナミックな大道芸は、我々の想像を絶するもので、身近には感じられない者も多いだろう。そこで終演後にこんな質問をしてみた。もし素人の私がこの演技をやるとしたら、何から始めれば良いのか。予想外の面白い答えが返ってきた。当然サーカス用の車輪を買わなければならないが、その前に土地を買ってくださいという。よしよしの実家には広い庭があるので、本番で使っているこの車輪を置いて練習しているとのことだった。
読者の皆様に、もしこれを始めたい気持ちがあれば、ぜひ広い庭のある不動産の購入から検討してみよう。
(りゅりゅ)
2024/11/04 03:53 PM