Festival Report フェスティバル レポート 2015
「いつも新しいことに挑戦し続けたい」 アイム モラレス
ステージが始まったとたん、お経のような音声。
・・・なんだ?どこから聞こえるのだろう?
頭の中はクエスチョンマークの嵐。
思わず周囲を見回して音声の発生元を探す。
すると・・・
その声はステージ上にいる
演技中のアーティストから発せられている!
・・・ではないか。
なにか歌っているようだ。
不思議な声に思わず引き込まれる。
するとおもむろに足元の巨大な輪を手にする。
パンフレットによればそれは
「シルホイール」
という名前らしい。
アーティスト・アイムモラレス。
大道芸のジャンルの中でも珍しい
大きなホイールを使った演技だ。
それは確かに観客の目を釘付けにするほど
すばらしい演技であるにもかかわらず、
観ているものの目には、彼が演技ではなく
心よりシルホイールと戯れるのを楽しむ
かのようにしか見えない。
やがてシルホイールは、彼の体の一部
であるかのように自在に彼に操られ、
彼とシルホイールは完全に一体となって
超高速で回転する別の生き物と化している。
そのスピード感、バランス感覚に圧倒された
観客の心が高揚するにつれ、
彼とシルホイールの動きも速くなり、
私たち観客までシルホイールと戯れるような
錯覚に陥るのが不思議だ。
そう、同じ時間を共有した私たち観客は、
まさに彼とおなじ「遊び」を楽しんでいるのだ。
そんなパフォーマンスを見られるなんて。
何とラッキーなのだろう!
しかし彼は言う。
「静岡の観客はとてもノリがよい(超意訳)。
アーティストにとってそのノリのよさは
とても、とても重要なこと。
だから自分もとても楽しく、気持ちよく
演技できる。温かい静岡の観客に感謝する」
つまり。私たち観客はただ見ているだけではない。
アーティストの演技をさらに素晴らしいものに
するためにとても重要な役割を果たしている
・・・らしい。
信じられないことだが、それがもし本当なら、
観客冥利に尽きる嬉しいことだ。
しかし、私たち観客がそういう重要な役割を
果たすことができるのはやはり、
アイムモラレスのパフォーマンスが、
ただひとえに魅力的すぎるからである。
断言する。
素晴らしきこのアーティストは、その演技で
ただの観客を瞬時にして一流の共演者に
してしまうだけの「なにか」を持っている。
そんな彼の口癖はこうだ。
「いつも新しいことに挑戦しつづけている。
これからも挑戦し続けたい」
なんということだ!
彼はこれからどれだけ進化するのだろうか?
想像がつかないが、大いに期待したいところだ。
(富士山なすび)
2015/10/31 06:01 PM