Festival Report フェスティバル レポート 2015

「素直に 無垢に 生き生きと」  サクノキ

世間で言うところの「アーティスト」とは雰囲気が違う。
彼がまとっている空気は一言では表現するのは難しい。
あえて言葉にするならば、

「癒しのオーラ」

だろうか。どこか人の心を和ませ、優しくする雰囲気が
彼の全身から立ち上っている。こちらまで優しい気持ちに
なるような、穏やかな凪のような雰囲気を彼は持っている。
そんな雰囲気に観客は心和み、幼い子どもでさえも
彼に対しては人見知りも警戒もすることなくすんなりと
彼の演技のアシスタントになってしまう。そんな空気が
彼にはある。そう思った。








古いフォークミュージックをBGMに繰り広げられる
その演技は、こちらが目を見張るほど超絶技巧で
時に大変な危険を伴う難しいものだ。
けれども観ている側からはまったくそれを感じさせない。
淡々と進むその演技の最中、こちらが観ていてハラハラしたり
緊張感を覚えることがほぼ皆無といっていいくらい自然で、
いつのまにかすうっと素直に「楽しさ」が観客の心に伝わる。
彼はたやすく観客の心に入り込み、その癒しの力と、
包み込むような優しい笑顔と、ごくごく自然体の演技で
瞬時のうちにがっちりと観客の心をつかみ、
観客とひとつになっていく。








・・・こういう表現は失礼かもしれないが、彼は

「稀代の人たらし」

である。そうとしか表現できない。
そして知らぬ間に演技者と観客が一体となって
その楽しさを分かち合う。
その場で強い一体感が生まれる。
それが彼、「サクノキ」を観たうそ偽りのない印象だ。


彼はクラウンになるためにサーカス学校で技術を磨き習得した。
その技術の高さは目を見張るものがあり、観客との掛け合いもうまい。

だからその演技は国内外でも評判が高い。

「チャップリンの空想をより高みに進化させたモダンなクラウン」

と呼ばれている。

しかし、サクノキはそれで満足しているわけではない。
より素直に、より人の心に自然に入り込み、
もっと楽しく一体感をもてるような演技をしたいと強く望んでいる。
たぶんその望みは遠からず叶うだろう。
そうなったらどれほどものすごいオーラを放ち、私たちを
どこまで心地よく楽しませてくれるだろう?
それを想像するだけでぞくぞくする。







written by 富士山なすび

2015フェスティバルレポート / 2015アーティスト オン部門
2015/10/31 01:54 PM
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