Festival Report フェスティバル レポート 2012

陽気でテンポのよい愉快な3人組/マイム クライム

ステージに向かって足を運ぶとそこはもう山のような人だかり。
その奥ではパントマイムにアクロバットとダンスを織り交ぜ、
風船やりんごという、一見関連のなさそうなグッズを使って
観客の子供たちを大いに喜ばせ、大人を楽しませながら
その人の山をどんどん増やす芸をする3人のナイスガイたちがいた。

それが『マイムクライム』。結成15年のベテランで、日本の他に
中国、韓国、ヨーロッパ各国を飛び回る実力派アーティストである。
ベルリンパフォーミングスクール仕込みの技の高さは折り紙つきだ。

ところで、筆者や観客の印象に残ったシーンがひとつある。



「動かざること山の如し」

な・・・シルクハットの微動だにせず、同じポーズを取っている姿だ。
相当な時間同じポーズで石像と化している。

その周りで鮮やかなブルースーツのメタボな男性がリモコン片手に
何とか黒の紳士を動かそうと躍起になっている。



しまいには、何人かの観客にもお願いしてリモコンを押してもらい、
ようやく動き出した黒の紳士。しかし、今度はブルーの紳士が固まった?!



・・・と思ったらまた動き出し、黒の紳士となにやら密談



もう何がなにやらわからない。先のストーリーがまったく読めない面白さ。

ところで。あれ?3人目はどこ?目を凝らしてもいない。
確か3人組と聞いていたが、筆者の位置から見えないのか、あるいは

・・・雲隠れか・・・?

そう思った瞬間いきなり現れた3人目。



彼もまた只者ではない雰囲気。
三人でパントマイム・マイム・マイム。徹頭徹尾なパントマイム。
一言も口を聞かず、特に大きなアクションもないのに淡々と
進む演技からなぜか目が離せない。

りんごのジャグリングでは観客の子供たちを巻き込んで
素直な子供たちに楽しいトリックを仕掛けながら彼らと、
りんごと、子供たち、そして見ている人たち全員が、
彼らの「童話の国」の住人になってしまうような錯覚を覚えてしまう。
パントマイムにこんな効果とパワーがあったとは誰が予想しただろうか?

グリム童話の国、ドイツからやってきたビターな童話の世界を
あなたもぜひ体感してみてほしい。

(chitose) 

2012フェスティバルレポート / 2012アーティスト ワールドカップ部門
2012/11/03 05:31 PM
<<次の記事 前の記事>>