会場レポート

スタッフが飛び回り取材し、会場よりその様子をお届けします。

風早の。三保の浦回をこぐ舟の。浦人さわぐ。浪路かな。

これは三保の松原に。白龍と申す漁夫にて候。われ三保の松原にあがり。浦の景色を眺むる所に。虚空に花降り音楽聞え。霊香四方に薫ず。これただごとと思はぬ所に。これなる松に美しき衣かかれり。寄りて見れば色香妙にして常の衣にあらず。いかさま取りて帰り古き人にも見せ。家の宝となさばやと存じ候。




上は静岡に所縁のある演目である能、羽衣の冒頭の部分だ。静岡シルクのパフォーマンスは羽衣を下敷きにしている。以下長くなるが能、羽衣のあらすじを説明しよう。



羽衣は三保の松原に住む白龍という漁師が、芳しき香りに誘われて天人の羽衣を見つけるところから始まる。近くに寄ってみるとどうやら普通の衣とは違うようだ。白龍はこれを家宝にし、持って帰ろうとする。すると天女が表れ「それは天人の衣である。たやすく人に与えることはできない。返したまえ。」と訴える。

それを聞いた白龍は「ならばなおのこと返すことはできない。家宝と言はず国の宝としよう。」と天女に伝える。すると落胆した天人は頭にかざした花はしおれ、脇汗をかき、嫌な臭いを発し、ウロウロとさまよい始める。これは、天人五衰と言って天人が死の直前に発する兆候である。

憐れに思った白龍は、「天人の舞いというのを一度観てみたい。舞ってくれれば羽衣を返そう。」と言う。
天人は、「舞を舞うにはその羽衣が必要です。返してください。」と白龍に伝える。
それを聞いた白龍は、「羽衣を返してしまえば、舞を舞わずにそのまま天界に帰ってしまうのではないか。その条件では返すことができない。」と伝える。
天人は、「嘘偽りは人間の世界の事です。天界には嘘偽りはありません。」と言う。
それを聞いた白龍は自分を恥じ、天人に羽衣を返す。すると天人は約束どおり天界の舞を舞い、七宝充満の宝を三保の松原に降らしながら、富士の高嶺をのぞみ、最後は霞に紛れて消えていく。




今回、静岡シルクが演じたのはこの話の冒頭の部分。白龍が羽衣を手にする。これは序章。20分間というわずかな時間ではそこまでしか演じる時間がなかった。しかし、その短い時間の中で白龍を演じるジャグラーは三保の松原を駆け巡り、羽衣は風にたなびき、富士が見える春の美しい海岸線を想像させる。彼らが目指すのは、現代サーカスとして羽衣を再解釈すること。この先が気になるところだ。



しかし、この先の上演はまだ決まっていない。彼らの羽衣はこの先どうなるのだろうか。だが、しかしそれはまた別の物語またいつか別の機会に話すことにしよう。

Y.K.Kobayashi

2018会場レポート::アーティスト フリンジ部門 / trackback (x)
2018/11/04 05:50 PM written by : スタッフ

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