Festival Report フェスティバル レポート 2018

円がつなぐ縁/Cyr Wheel Ablaze

重厚感のある金属の輪がぐるり、ぐるりと回転する。無邪気に、優雅に、そして力強く、時々に表情を変えながら。炎がやわらかく弧を描き、円と成り、炎と金属が丸く柔らかく観客の心をつかんでいく。

Yangの操るシルホイール(金属の輪)もTitosが戯れる炎も、それぞれが自身の分身のような物なのだと言う。シルホイールや炎には魂が宿り、自由な意思があり、個性すら感じられる、と。
転がるシルホイールを追いかける時には自分の夢や自分自身を追いかけているような気持ちになるそうだ。どの道具を扱うときも「物」ではなく大切な何かを扱うかのように接し、時にはシルホイールや炎の灯ったスタッフ(棒状の手具)と挑戦的な関係で互いを高めあっていく。パフォーマンスの最中は、少年たちが青年に成長する過程を見ているかのような気持ちにすらなる。

彼らがパフォーマンスの最後に掲げる言葉は「初心忘るるべからず」
自分が誰なのかを忘れないこと。自分の心の中にある「円」を忘れないこと。どうして私たちは愛し合い、生きていくのか。
素の自分で観客と向き合い、人生について私たちの心に問いかけるかのような、暖かいパフォーマンスだった。

台湾でのステージネームは「星火燎圓」。 星、火、そして輝く円。
「人生とは円である」のメッセージが、観客一人ひとりの心を繋ぎとめ、柔らかくしっかりと包み込んだ。

(瀬尾未奈)

2018フェスティバルレポート
2018/11/02 04:34 PM
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